東京地方裁判所 昭和50年(ワ)5164号 判決
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【判旨】
原告辰巳自動車が不動産一を所有していること、原告原シヤリングがもと不動産二を所有していたが昭和五一年八月二四日これを他に売却したこと、被告が昭和五〇年六月三〇日本件建物を別紙物件目録記載三1の土地上に(<証拠>によれば、不動産一、二の南側に)建築しこれを所有していたこと、本件建物が地上九階建、高さ26.2メートルでありその北側に幅員一一メートルの道路があることはいずれも当事者間に争いがない。
原告らは、被告が本件建物を建築所有したことにより、原告ら所有の不動産一、二に日照阻害が生じ、そのため右各不動産の価格が下落した旨主張し、<証拠>(日影図)、<証拠>(原告ら側作成の図面)によれば、冬至における本件建物による地表面での日影の状況をみると、不動産一については全体として午前九時で四割程度、午前一〇時で六、七割程度、午前一一時、一二時で五、六割程度、午後一時で八割程度、午後二時で九割程度、午後三時で六割程度の部分が日影となり、また不動産二については全体として午前九時で九割程度、午前一〇時、一一時で七割程度、午前一二時で五割程度、午後一時で四割程度、午後二時で三割程度、午後三時で一割程度の部分が日影となるかのように窺われるが、<証拠>に表示されている不動産一、二中の建物の形状はそれぞれ甚しく異なつているのみならず、その各表示にかかる不動産一、二中の各物件の面積割合が別紙物件目録に記載されたその面積(これらがいずれも公簿記載の面積であることは、<証拠>により認められる。)割合と比べて著しく異なつている(特に<証拠>の日影図)など、右各証拠に表示された不動産一、二の位置、形状等の正確性、従つてその日照阻害の程度の正確性に多大の疑いがある。また<証拠>に前記当事者間に争いのない事実を加えると、本件建物(九階マンション)建築当時その付近は準工業地域、準防火地域、第三種容積地区に指定されていたところ、当時その付近には四ないし六階建の建物がいくつか存在し、また周辺には建築中のものを含めて八ないし一四階建の建物(マンション、アパートなど)が存在していたこと、その後も付近一帯の高層建築化が進み、現に原告辰巳自動車は不動産一中の建物を取りこわしたうえその土地上に五階建の建物の建築をすすめ、原告原シャリングが売却した不動産二中の土地上には既に九階建のマンションが建てられていること、本件建物(高さ26.2メートル)と不動産一、二とは幅員一一メートルの道路によつて隔てられていることも認められる。従つて、前記のような日照阻害の事実(その正確性自体に疑いがあることは前示のとおり。)があるとしても、それだけでは未だ本件建物による不動産一、二に対する日照阻害の程度が原告らの受忍限度をこえる程度のものとは認められず、他にこれを認めることができるような的確な証拠はない。加えて、本件建物による日照阻害のため不動産一、二がそれぞれどの程度の価格低下をきたしたかについてこれを確知することができる適切な証拠もない。
従つて、その他の点について判断するまでもなく、原告らの本訴請求は理由がなく棄却を免れない。
(篠原幾馬 和田日出光 佐藤陽一)